ブログ「とある三丁目の殺人~出題編~」

画像は『ストーカーの唄』より

事件ナンバー:2810H

事件名:紀田 飛夜 殺害事件

担当:間柴警部

皆川和子からの事情聴取記録

5月16日、午前11時27分


間柴「この記録は、間柴による録画記r……」

皆川「また同じことを聞くの刑事さん!? 私ははっきりこの眼で見たの!」

間柴「落ち着いてください、皆川さん。一応証拠として必要事項を冒頭に述べているところから録画しないといけないんです」

皆川「……だったら早くやって頂戴。もう私が見たってことは変わらないんだから! だいたい早く終わると聞いてたのにいつまでかかるのかしら。ご飯つくらないとうるさいのよ、うち。そう奈津子がね……」

間柴「ちょっと待ってください。その話はあとで聞きますから。……事情聴取、聞き手は間柴、相手は皆川和子。5月16日、午前11時27分……もう半か。〇〇九丁目の皆川宅にて。よし、いいですよ。皆川さん」

皆川「……三丁目の人のことよね。名前は……そう、紀田ね。表札で知ったわ。ご近所付き合いをなさらない方でしたわ。引っ越してきたのが一年前かしら。一戸建ての中古物件を購入されて住んでいたのよね。以前に住んでいた箕田さんとは仲が良かったのだけど、ほら、身内の不幸があったじゃない。それで……ごめんなさい、関係ないわね。私はここに住んで、今年で42年だわ。20歳から住んでいるから計算は簡単なの。主人を事故で亡くしてからは一人で住んでいるのよ。それでも奈津子の……いえ、娘の家が共働きでねぇ。孫の明ちゃんのご飯作らないといけなくて大変なの。『ここからすこし離れたところに住んでいるから一緒に住んだほうが良い』って言ってはくれるんだけどね。やっぱり主人といたこの家にいたいの。おかげでゆっくりした老後とは無縁だわ」

間柴「分かりました。では、昨日紀田さん宅あたりで誰かを見かけましたか?」

皆川「あの人を訪ねてくる人は一人もいなかったと思うわ。そもそも家に人がいる様子がないの。私が寝ようとしているか、夜中にふと目が覚める時間……そう、0時前か、午前2時3時くらいかしら。とにかく遅い時間に電気がついたり、2、3日全く家に誰もいないような感じがしていたわ。でも、まさかあんなふうに殺されるなんてねぇ。まったく何が起きるか分かったもんじゃないわ」

間柴「ですが、昨日彼は家にいたんですよね?」

皆川「……ええ、どこに行っていたとかは分からないですけど、午前中に車の音がしたの。えーっと、そうね。9時だったかしら。ちょうどテレビの『9時に揺れない安楽椅子』が始まったのを覚えているわ。あれ好きなの」

間柴「聞こえたと言いますと、彼の姿は見ていないんですか?」

皆川「見ましたわよ! ここの部屋、テレビの奥が窓になっているでしょ。で、今座っている位置からいつも見ているの。だから、ホラ。ちょうどお向かいが見えるでしょ。彼が車から家に入るまで、すべてこの眼で見ましたの!」

間柴「それで、昨日は誰かが訪ねてきたのを見たんでしたっけ」

皆川「いいえ! 訪ねてくる人は一人もいなかったと言ったでしょ! ……でも、あれかしら。彼に用があるのではないと思うのだけど、一人いたわ。よくある宗教勧誘がね」

間柴「宗教勧誘?」

皆川「ほら、色々な家をまわっては『あなたは神を信じますか?』とか言ったりするあれよ。独特なボード持ち歩いているからすぐに分かったわ。クリップボードといったかしら。とにかく、あっちもそれを隠せばいいのに堂々と見せつけるでしょ。一度断ってからは、あのボード持っている人を見たら居留守使うようにしてるの」

間柴「それは何時でしたか? 覚えている限りのことでいいので」

皆川「うーん……あ、『4時になっても揺れない安楽椅子』が始まる前のCMを覚えているから、その時間。ええ、午後4時ね」

間柴「宗教勧誘の人の外見は覚えていますか?」

皆川「顔は分からないわ。ボードしかよく見えなかったし……でも女性だと思うわ。いつも勧誘役は女性でしたし、背もそこまで高くなかったわ。ああ、思い出してきた。……ええ、髪が茶髪で肩までの長さ。……間違いないわ、女性よ。けどごめんなさい、年齢までは分からないわ」

間柴「最後に、その女性は他の家にも入っていきましたか?」

皆川「それは分からないわ。居留守を使うためにカーテンを閉めましたし。……けど何でかしら。いつもは私の家にもチャイムを鳴らすのに、昨日に限ってそんなことなかったの。大方私は相手にしないということがボードの中身にでも書かれていたのかしらね」


記録終了。


事件ナンバー:2810H

事件名:紀田 飛夜 殺害事件

担当:間柴警部

福田夢美からの事情聴取記録

5月16日、午後13時11分


間柴「間柴による、福田夢美の事情聴取、5月16日、午後13時11分、警察本署にて。……来てくださってありがとうございます、福田さん」

福田「弁護士は何時来るの? もう来ていると思ったのに」

間柴「今のところはただの「お決まりの手続き」ですから。弁護士に関係なくお答えしてくださって結構ですよ。ただの確認です。……まずは、あなたは被害者と仕事上かなり親密な関係でしたよね?」

福田「あくまでビジネス上のね。それももう過去のこと。今年に入ってから業務提携は終わり。それももう調べがついているんでしょ、どうせ。紀田とはソフト開発でよく連絡を取り合っていたわ。けどあくまで彼は技術面、私は営業面と割り切って、それ以上のことはなかったの。ほかの人がどう面白おかしく言おうがそれだけ、何もなかった。何もないようにしたのは彼だけどね」

間柴「と、言いますと?」

福田「どうせ分かってるのにいちいち言わせようとするあんたの態度ほんと嫌い! ……麻薬よ。ほら、眉一つ動かさない。嫌になるわ。……あいつは勝手に麻薬売買を始めて、金を手に入れ始めたの。私らに相談もしないでね。だからそっちは何も分かんない。あんたたちで勝手に調べなさいよ」

間柴「そうですね。……私たちのほうで確かに麻薬取引の調べはついていました。ですが、そのことをあなたは誰から聞いたんですか? 紀田本人からですか」

福田「そうよ。何か文句ある? それで『まとまった金ができた』と言われてどうしろって感じよ」

間柴「なるほど……。それでは同僚の高橋圭吾さんとあなたの関係について伺ってもよろしいですか?」

福田「だから! どうせ分かってるんでしょ! 彼とは同居してるの。紀田が麻薬に手を染めだしてから、ソフト開発の納期が遅れたせいでいくつかの会社から契約解消を言われてね。ついこの前、家賃の低い家に引っ越したわ」

間柴「紀田はあなたに大金を見せつけ、高橋からこちらに乗り換えろと言い寄ってきたという事実はありますか?」

福田「何それ。ちょっと待って、弁護士を呼んで! こんなの手続きじゃないじゃない! 取り調べよ!」

間柴「すみません。質問を変えます。紀田の家に行ったことはありますか?」

福田「行ったことないに決まってるじゃない。何度か誘われたことあるけど、圭吾に変に思われたくないの」

間柴「皆川和子という人物をご存知ですか?」

福田「誰それ?」

間柴「5月15日午後3時から5時の間どこにいましたか?」

福田「家にいたわ。圭吾と一緒よ」

間柴「残念ながら、親密な関係な方の証言は信用できないことになっています。高橋さん以外にそれを証明できる方はいますか?」

福田「いないに決まってるじゃない」

間柴「昨日、皆川さんは〇〇三丁目であなたと似た人物を見たと言っています」

福田「そんなわけないでしょ」

間柴「茶髪で肩までの長さ。背格好もあなたぐらいです」

福田「身長161センチで48キロ、それで茶髪なんて一体何の特徴があるっていうのよ。まぁ言いたいこと言えばいいさ。あとで恥をかくのはあんたらよ」

間柴「少なくとも茶髪は見間違えないと思ったんですが、まぁそうですね」

福田「おばさんが茶髪を見て何が言いたいのさ。今の世の中当たり前すぎて就活生だってしてるっていうのに。何ならあんたの髪の毛も染めてあげようか。近くの薬局いけばすぐよ」

間柴「……最後に、あなたは普通免許を取得していますが、普段車を乗られていますか?」

福田「警察の駐車場に止まってるわ、探してみれば? 私の車とまったく同じヤツがいくつもあるから」


―これ以上の質疑に福田は一切答えなかった。


問題:ここまでの2つの事情聴取から間柴はあることに気が付いた。それは一体何か。


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